(前回までのあらすじ)
ワラバラ探検隊一行は、当初予定していたJR旧三江線探検を雨天のために取りやめ、急遽島根県大田市にある『福光石の石切り場』へと向かった。現地ガイド案内のもと、楽しいひと時を過ごした探検隊は一路、『X集落』を目指すのだった。
限界のその先に……限界を超えた集落
島根県江津市Q町。
中国地方の最大河川・江の川沿いに位置し、平成27年の国勢調査によれば、人口342人。高齢化率57%。
※同調査では、江津市全体では人口24,447人。高齢化率36%。
そんなQ町に”消滅した集落”があるという記事が地元新聞に掲載されたことがある。
それが”X集落”だ。
『限界集落』という言葉は、メディアでも取り上げられることもあり、耳にしたこともあるだろう。
限界集落の定義は「人口の50%以上が65歳以上の高齢者になり、冠婚葬祭などを含む社会的共同生活や集落の維持が困難になりつつある集落」(wikipedeiaより引用)と言われている。
江津市の高齢化率もなかなかだが、そんな江津市に住んでいる我々は限界集落を感じることはない。
しかし、限界を超えて消滅した集落があるのなら、百聞は一見にしかず。
実際にこの目で確かめてみたい。
以前住んでいた方々に対しては失礼かもしれないが、地域の”リアル”を知るべく、X集落へ向かった。
Q町のまちなかを出発しておよそ20分。
我々はX集落に到着した。
江の川と山に囲まれ、ほんの少しだけ開けた場所にある。
民家も若干現存するが、人が住んでいる気配はない。
廃線になったJR旧三江線もあり、川沿いにさらに奥へと進む。
車がある……服を干している……
元々集落に住んでいた人が何かの用事で?
JRの下請け会社が廃線を調査に?
まさか人に会うとは思っていなかった我々は一瞬焦りまくる。(焦ったのであって、ビビッてはない←重要)
しかし、人生も探検も一期一会だ。
意を決し、車に近づいてみると……
人の住む”集落”は消えたが……
探検隊「こんにちは、突然すみません」
?「!?」
探「いいい以前新聞でこの集落が消えた、というききき記事を読んで来てみました。こちらに住んでいらっしゃった方ですか?」
?「そうですよ」
探「そうでしたか、作業中にすみません。僕ら江津市に住んでいるんですが、ここには初めて来ました。普段こちらにはよく来られるんですか?」
?「えーとね……」
こんな感じで少し立ち話ができた。
最初はもちろん警戒されたが、まずは我々が自己開示をして怪しい者ではないことを理解していただき、いろいろとお話をしてくださった。
詳細は個人情報もあってここでは書けないが、今でも年に何度かこちらに来られているそうだ。
人が住まなくなっても、かつて住んでいた方々はそれぞれに用事があって、今でも集落に通っているという。
集落としては消滅したかもしれないが、そこに住んでいたことでそれぞれに物語があり、かつて住んでいた人たちとこの集落は今でもつながっているようだ。
かつて自分が住んでいた場所が、消えてなくなる。
それはいったい、どんな気持ちなのだろう。
この集落は江津市のまちなかから車で40分の場所にあり、後半はほぼ山道。
決して利便性のよい場所ではない。
世の中はどんどん便利になっている一方で、こうして時代に取り残され、消えていく場所もあるのだと思うと、ただただ諸行無常である。
なんとなく寂しい気持ちを抱きながら、我々は集落を後にした。
アイツも限界のその先へ――
集落を出た探検隊は、サカモト隊員が行ったことのない場所に行ってみたい、とまるで予定を立てていない休日に彼女が彼氏におねだりするようなことを進言してきたので、これも新入隊員研修の一環だということで、Q町から別の山間の町へ抜ける山道を走った。
今回の探検もオダワラ旅団長の愛車・タント号で出動しているのだが、「何年か前に当て逃げにあった」らしく、冷却機能の一部が消失しているらしい。
今日は6月末。暑さは本格化していないが、山道を走り続け、車内クーラーを利かせていた車が徐々に異変をきたす……。
オダワラ「ベタ踏みなのにスピードが出ないなぁ。暑いけどちょっとクーラー切るね」
少しでもエンジンの負荷を減らすためだ。
窓を全開にして、それからもしばらく山道を走る。
勾配がきつい。
うなりをあげるタント号!
すると……
オダワラ「えっ」
ボンコバラ「えっ」
サカモト「えっ」
まさかのオーバーヒートランプが点灯!
車を急いで停めると、ボンネットの中から
冷却液が沸騰している!!
ボンネットから煙があがる!!(アメリカ映画みたい!!)
焦って(≠ビビる)車を降りる探検隊。
したたる冷却液。
車がまったくといっていいほど通らない山の中。
完全に立ち往生である。
とりあえず30分ほど待ち、冷却液とエンジンが冷めるのを待つ。
なんとかエンジンがかかり、山を下りることができた。
我々の激しい探検行動によって、タント号は犠牲になったのだ……。
to be continued…